アイデアは一期一会
タイトルにもある通り、アイデアは一期一会だと僕は考えている。
似たようなことなら、人は意識しなければ延々と、鎖の繋がれた犬みたいにぐるぐる回っているけれど、その時の閃きはその時限りだし、そこから展開されるプロセスは――結果は必ずしもそうではないけれど――比較的唯一性が高い、と思う。バタフライエフェクトのようなもので。
そういえば、円城塔が『道化師の蝶』の中で、アイデアを蝶にたとえていたんだっけ。今度読みなおそうかな……
それはそうと、アイデアは蝶のようなもの、というのは言い得て妙だと思う。
経験論だけど、何か思いついたとき、肉体的にも、そっと動かさないといけない。アンドロイド関連での、心身一元論、というのを踏まえなくても、頭の中にある帽子――虫取り網がメモすることだとしたらその代替物として――で、そっと覆い隠したまま、逃げ出さないように、傷つけないように動かさないと、「あれ、なんだったっけ? 何か閃いたはずなんだけど…」なーんてことになりかねない。
アイデアをメモするときに重要なのは、急に動かないこと、の他にあと、二つある。
①きちんとメモするということ――できれば手書きで。
書きなぐっているなら特に、その日のうちに清書しないと、そのあまりの暗号具合に、解読できなくなる。スマホでもPCでもいいけど、それらは変換という中間作業が挟まるため、思考の広がりを押しとどめてしまうことになりかねない。思考速度に追いつくレベルで打鍵できるなら問題ない……んだけど、アンダーバーや色分け、図や矢印をラフに使える手書きの方が、加工性と柔軟性に優れているため、便利だと思う。まあ、究極的には好みとか、自分のスタイルにあったものを使うようになる。自然と。
②メモしたものはアーカイブにする。
まず、メモをばらけさせていてはいけない。検索効率が激減して、どこに何を書いたか思い出せない。これは、別に手書きに限らずとも、PCならば整理されずに放置された膨大なテキストデータとか、100件以上あるメモアプリのデータとか、まあデジタルだって汚部屋化するものだ。
で、集めたら、定期的に、面倒でもそれをデータベース化する必要がある。タグをつけて、検索性を上げたりだとか。タグ、というのはデジタルじゃなくても、工夫すればいける。
だけど、何より重要なのは習慣化できること。どんなに忙しくても出来る、簡単なことを続けること。そのためには、どんどん無駄を省いていくしかない。やれ記号を上手く使おうとか、ノート術だとか、本屋に行けばそれこそ山のようにあるけども、そういったテクニックの前に、「何のために――そのメモを――使うか」といったことを意識しなければ無意味だ。というかまあ、やってればそのうち面倒がって、どんどんルールは簡素化されていくものだと思う。
「忘れる程度のアイデアなんて、しょせんそんなもん」とか言ってる人がいるけど、僕は正直、その意見に賛同できない。アイデア単体であれば、まあ、人間の考えていることなんてそう大きく変わらないんで、またどうせ似たようなことを考えるでしょう。でも、アイデアはデジタルなものじゃない。もっと不定形で、きっちり枠にはまるようなものじゃあない。
数学的にたとえるなら、整数ではなくて、もっと無比数めいたものだと思う。言語化(というか、表現全般かな?)する際、それを有比数の範囲内で近似値にするようなもので、それは決して、イメージそのもののかたちを写し取れるようなものじゃない。言語は常に、捨象される。だからこそ、その切り落とされた部分、というのは絶対存在するはずで、その「(無比数)-(有比数)」の値*1に当てはまるようなもの――比喩からアイデアの話に戻して――とは、その時浮かんだ、多方面に渡って広がりを持つ二次的なアイデア、その連鎖だ。
でまあ、メモについてだけど、
1)書きなぐり
2)清書、タグ化
ということなんだけど、これに加えて、
3)拡げる
ということが必要になってくる。
アイデアには二種類あって、一つ目は思考のタネになるもの。二つ目が、パッケージというか、アイデア自体の組み合わせというか、外枠にあたるもの。――それぞれ、好奇心とセンス(ないし経験知)が関わっているのかもしれない。
料理で言うなら、素材と調理法の関係というべきか。
それぞれ、似ているように思えるけども、明確に違う点は、思いつく時期にある。
というのも、ひとはその日その日で――ひょっとするとその場その場で――思考のギアが変化する。その幅は個人差あるけども。
で、その「拡げる」というのは、後者にあたるもので、問題意識やそのとき興味を惹かれたものを俯瞰してみると、案外、閃くことが多い。それは前よりずっと上質なものだ。
うだうだ考えてきたけども、要は、思いついたアイデアは、活かさなければ意味がないってことだけ憶えていればいいと思う。
*1:比喩の例で細かいけども、これは(無比数)>(有比数)の場合。近似された有比数の方が大きい場合は、求められた値に1を加えれば、同様の値になる、はず。今回はリーダビリティを優先するために、数式をシンプルにした(←悪分のくせしてリーダビリティとか今さry